桜の咲く季節になると
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毎年、桜の咲く季節になると10年以上前に他界した母のことを思い出す。
年年歳歳花相似たり
歳歳年年人同じからず
唐詩選からの有名な一節を学んだ学生の頃は、この漢詩のどこがそんなに優れているのか全く理解出来なかった。
毎年咲く花は似ているが、毎年人は同じではない。まだ成人してもいない学生にとっては、何を当たり前のことを言ってるの?そんなの当たり前過ぎて、詩にする必要ないよね。この漢詩の一節に初めて接した時の私の感想はこのようなものだった。
難病のパーキンソン病を発症してから七年以上経過して随分と弱っていた母を、車椅子に載せて近所の公園に満開の桜を観に連れて行った。
もう自力では歩けない状態の母は、こんなに美しい桜の花を来年は観ることができるのだろうか。おそらくは、これが母にとっては最後の花見になるのだろう。そう感じた時、冒頭の漢詩の一節がふと頭に浮かんだ。
目の前に見える桜の花が美しければ美しいほど、もう消えかかっている母の命の儚さが、より一層際立ってしまい、胸が締め付けられる思いがした。
自分を含めた身近な人々の死を近くに感じた時、人はきっと命の尊さや儚さを痛切に実感するのだと思う。
今年はどんな気持ちで、どこの桜を眺めるのだろうか。なかなか暖かくならない最近の気候を、少し意地悪く感じた週末である。
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